第9章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ II **
自販機前に着くと、五条先生はすでにそこで待っていた。
俺に気づくと、いつもの調子で片手を上げる。
「恵、おはよ」
「……おはようございます」
何の用で呼び出したのかは気になったが、その前に俺から昨夜が声を出したことを話した。
「……で、朝まで特に何もなかったです。も、変わった様子はありませんでした」
「ふーん……」
五条先生は顎に手をやり、考えるように黙り込んだ。
いつもなら何かしら余計なことを言ってくるのに、珍しく真剣な顔をしている。
やはり、何かまずかったのだろうか。
「……五条先生、姑獲鳥は――」
「恵、童貞卒業おめでとう♡」
「…………は?」
俺の反応に、五条先生がきょとんとする。
「え? 違うの? だって恵に、の呪力がめっちゃ濃く残ってるけど」
「……」
六眼の厄介さを忘れていた。
違う、とは言い切れない。
「いや〜、長かったなぁ。二人が付き合うことになって、僕嬉しいよ」
「…………」
「なに、その顔」
「……いや……まだ、付き合っては……」
「…………え?」
今度こそ、本気で間の抜けた声が返ってきた。
「まだ付き合ってないの?」
「……」
「なのにしたの?」
「…………」
「恵……」
五条先生が突然俺の両肩を掴み、ガクガクと揺さぶってくる。
「僕は恵をそんなふしだらに育てたつもりはないよ! お父さん、悲しい!」
「誰がお父さんだ!」
そもそも、あんたが先にゴム渡してきたんだろうが。
「まあまあ」
五条先生は俺の肩に腕を回してくる。
ニヤニヤと笑いながら顔を覗き込んできて、頬を指先でつんつんと突かれた。
「で? 初めてはどうだった? ちゃんとをリードできた? 恵、そういうとこ不器用そうだし。たくさんイかせてあげた? あ、もちろん避妊したよね?」
「……っ、俺はあんたとそういう話がしたいわけじゃありません!」
いい加減うんざりして、五条先生の腕を振り払った。