第9章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ II **
「なら、今日狗巻先輩と任務だろ?」
「…………」
「朝早いやつ。昨日言ってたじゃん」
完全に忘れてた。
……そうだった。
「なんだよ、伏黒。寝ぼけてんの?」
虎杖が怪訝そうに俺の顔を覗き込んでくる。
「別に。なんでもねぇ」
よかった。
少なくとも、今すぐ何かが起きたわけじゃない。
「あ、そうだ。昨日の差し入れ、受け取った?」
「……差し入れ?」
「ほら。伏黒、風邪って言ってただろ? だからに頼んだんだよ。俺の代わりに持ってってって」
だから昨日、は俺の部屋に来たのか。
そういえば、床にコンビニの袋が落ちてたな。
そういうことか。
「どうだった?」
「……まあ。虎杖にしては、いい差し入れだった」
「だろだろ?」
虎杖が得意げに笑う。
「風邪の時はやっぱ、おにぎりと栄養ドリンクが一番だからな!」
「…………ああ」
たぶん、虎杖が思ってるのとは違うけど。
俺にとっては、これ以上ない差し入れだった。
「じゃ、後でな」
「ああ」
虎杖は何事もなかったように洗面所の方へ歩いていく。
その背中を見送って、俺も一度自分の部屋へ戻った。
が任務に行っているだけだと分かって、ようやく少し冷静になれる。
さっき飛び出した時には気づかなかったが、改めて見ると、部屋の中には昨夜の名残がそこかしこに残っていた。