第9章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ II **
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カーテンの隙間から差し込む朝の光に、ゆっくりと目を開けた。
夢の中で握っていたの手の温もりが、まだ掌に残っているような気がする。
昨夜のことが、徐々に頭に戻ってくる。
『どこにも行かないで……恵くん』
初めて聞いた、の声。
俺の名前を呼んだこと。
何度も重ねたキス。
俺の下で、快感で目を潤ませていた顔。
腕を二回叩いて、もっとって伝えてきたこと。
ずっと好きだった。
ずっと、こんなふうに触れたかった。
にも俺を求めてほしかった。
「……身体、大丈夫か?」
まだぼんやりとする視界のまま、隣へ手を伸ばす。
「……?」
触れたのは、冷えたシーツだけだった。
一気に眠気が吹き飛んで、飛び起きる。
部屋を見渡すが、はどこにもいなかった。
「……っ、何やってんだ、俺は」
寝てる場合じゃないだろ。
は昨日、声を出したんだ。
十年間、一度も破らなかった縛りを破って。
それなのに、何も起きなかったからって。
なんで勝手に大丈夫だと思ってんだよ。
「くそっ……」
自分の部屋に戻ったのか?
ここは高専の結界内だ。
もし姑獲鳥が現れたなら、何かしら異変が――。
……いや。
そんな保証、どこにもねぇだろ。
呪いのことなんて、まだ何も分かってない。
部屋を飛び出して廊下へ出たところで、ちょうど向こうから誰かが歩いてくる。
寝癖のついたピンク色の髪。
片手には歯ブラシ。
口の端には白い泡。
虎杖だった。
「ん? ふひぐろ、風邪治った――」
「は!?」
「……え?」
「、見なかったか!?」
「……」
虎杖が歯ブラシを咥えたまま、何度か瞬きをしたあと、口元の泡を手で拭った。