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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第9章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ II **


背中越しに、布団がわずかに沈んだ。
すぐ近くにの気配を感じる。


今まで、この家には三人いた。

津美紀がいて。
がいて。
俺がいた。


それが今日から、二人になった。


隣の部屋に行っても、津美紀はいない。
朝になっても、いつもの口うるさい声はもう聞こえない。


昨日まで当たり前だった三人での暮らしが、突然なくなった。
その事実が、急に現実味を持って胸にのしかかってくる。



「……」



俺は背を向けたまま目を閉じていると、がこちらに身体を寄せてきた。

背中に伝わる温もりを感じた途端、さっきまで詰まっていた息が、わずかに深く吸えるようになった。


帰れって自分で言ったくせに。
今夜だけは、がここにいてくれることがありがたかった。









「…………津美紀、起きるよな」



そう言葉にした途端、視界の端がじわりと熱を持った。


……くそっ。
俺まで弱ってどうする。

津美紀が目を覚ました時、ちゃんと迎えてやらなきゃいけない。
だっている。


耐えるように、奥歯を噛みしめた。
すると、が布団の中で俺の手を探して、ぎゅっと握った。
それから、は俺の背中に額をこつんと当てる。


大丈夫。
私はここにいるよ。


声なんかなくても、俺にはそう言っていることがわかった。


俺もその手を強く握り返す。



助けられる人間には限りがある。
誰も彼も救えるなんて、最初から思ってない。

だから俺は、不平等に人を助ける。

自分が助けたいと思ったやつを、助ける。





「……、お前は俺が絶対守るから」





そう決めたのが、あの夜だった。
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