第9章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ II **
「……?」
思わず口から名前がこぼれると、もう一度、二つの輪が重なって動く。
いる。
が、ここにいる!
「! そこにいるのか!?」
俺は白いシーツへ駆け寄った。
手を伸ばすが、見えない壁に阻まれる。
「玉犬! やれ!」
俺の声に反応し、二匹の玉犬が勢いよく飛びかかった。
鋭い爪が、目の前の結界を切り裂こうとする。
――ガッ!
だが、弾かれた。
玉犬は着地すると、牙を剥いて低く唸った。
傷ひとつついていない。
外からの侵入を徹底的に拒む結界。
綻びを見つけたところで、そう簡単には破れないらしい。
どうする。
どうすれば、を助け出せる?
ふと、五条先生の言葉が頭をよぎった。
『声を出したら、他の誰かを殺すとでも言われてたんじゃない?』
『自分じゃなくて、大切な誰かを失うのが怖かった。それなら、が声を封じていた理由もわかる』
が俺の名前を呼んだら、姑獲鳥はどうする?
間違いなく、俺を殺そうとするはずだ。
俺を狙って外へ出ようとすれば、その瞬間、結界に隙ができるかもしれない。
……賭けだけどな。
「……」
俺はそこに映る小さな手の影に、自分の手を重ねた。
「俺の名前を呼べ。大丈夫だから」
映っていた影が、ぴたりと止まる。
怖いよな。
お前が何を恐れてるのか、今なら少しは分かる。
でも、もう一人で背負うなよ。
「十年間、お前が俺を守ってくれたんだろ!? だったら今度は、俺を信じろ!!」
「呼べ、!! 俺の名前を――!!」