第9章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ II **
𓂃 side:伏黒恵 𓂃
俺が中三に上がって間もなく、津美紀が呪われた。
正体不明、出自不明。
全国に同じような被呪者がいるらしい。
何も分からないということだけが分かって、津美紀は寝たきりになった。
津美紀を高専関係の病院に入院させた、その日の夜。
部屋の電気を消しても、どうしても眠れなかった。
何度目か分からないくらい寝返りを打って、壁の方を向く。
目を閉じると、病室のベッドで眠っている津美紀の顔が浮かんだ。
なんで、津美紀なんだよ。
考えたところで、答えなんか出ない。
五条先生にも分からないことを、俺に分かるはずがなかった。
コン、コン。
控えめなノック音の後、ドアがわずかに開く。
その隙間からが顔を覗かせていた。
「……何」
は答えず、俺の顔をじっと見る。
それから部屋に入ってきて、ベッドの横まで歩いてきた。
「もう寝ろよ」
そう言って背を向ける。
けれど、は出ていかなかった。
「……なんだよ?」
振り返ると、が自分とベッドを交互に指差している。
「ここで寝るのか?」
こくん、とが頷いた。
「……いや、自分の部屋戻れよ」
は首を横に振った。
「戻れって」
もう一度強めに言っても、は動かない。
むしろ、俺をじっと見返してくる。
その場から退く気はないらしい。
どうせ、俺のことを心配してるんだろう。
「俺は平気だから」
そう言っても、は納得しなかった。
眉を寄せて、今度は布団をくいっと引っ張る。
「……ったく。好きにしろ」
何を言っても無駄だと分かって、仕方なく壁際へ身体を寄せる。
はもそもそと俺の布団の中へ潜り込んできた。