第8章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を離さない Ⅱ**
先生はどこからかお菓子をいくつも持ってきて、ローテーブルの上に並べた。
「も食べていいよ」
「……ありがとうございます」
先生がテレビをつけて、お菓子の袋を開ける。
私もクッキーを一枚取って、先生の隣でテレビを眺めた。
なんだか、不思議。
先生の家で。
先生の服を着て。
並んでお菓子を食べながら、テレビを見てる。
もし先生とお付き合いしたら、こんな感じなのかな。
想像しただけで顔がにやける。
テレビでは、音楽番組が流れていた。
曲が流れ始めると、先生が「あ」と小さく声を上げた。
「僕、この曲好き」
知らない曲だ。
初めて聞いた。
先生、こういう曲好きなんだ。
この曲……後でスマホに入れよう。
「は?」
「……え?」
「誰が好きなの?」
誰が、好き。
そんなの、子供の頃から決まって――。
先生の顔が浮かんだ。
そのすぐ後に、伏黒くんの顔も。
あれ。
なんで、伏黒くんが。
違う。
違わない?
いや、違うって何が?
「っ……」
二人の顔を振り払うように、ぶんぶんと強く首を振った。
「ん?」
「な、なんでもないです!」
さっきの質問は音楽のことだよね。
今の流れ的に。
「えっと……私は――――」
最近よく聴いている曲を何曲か答えると、先生は意外そうに眉を上げた。
「へぇ。、そういうの聴くんだ」
「変ですか?」
「いや。知らなかったなって。今度、僕も聞いてみよーっと」
そう言って、先生はまたテレビへ視線を戻した。
私はそんな横顔を、ちらっと盗み見る。
先生のことを知れば知るほど、もっと知りたくなる。
好きなもの。
嫌いなもの。
興味があること。
どんな服が好きで。
普段、どこのお店で買い物して。
コンビニなら、どこによく行くとか。
好きなお菓子。
よく飲むもの。
休みの日は何時に起きるのかとか。
そんな、本当にどうでもいいことまで。
……待って。
私、知りたすぎじゃない?
好きな人の行きつけのコンビニまで知りたいって。
それ、もう……ストーカーみたいじゃん。