第8章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を離さない Ⅱ**
同じ匂い?
あ、そうだった。
さっき先生のシャンプーとボディソープ使ったんだった。
「心の準備って、なに?」
「あ、いや、えっと……」
「もしかして、僕が襲うと思った?」
「〜〜〜〜っ!!」
何も言い返せずに口をぱくぱくしていると、先生は堪えきれなくなったみたいに声を上げて笑った。
私のばか!
これじゃ、先生に何かされるの期待してましたって、自分から言ってるようなものじゃない。
恥ずかしい。
恥ずかしすぎる。
先生はさっきから笑ってるし。
何かしていないと、いたたまれなくて。
水でも飲もうとペットボトルの蓋を開けた。
「わわっ……!」
慌てていたせいで手元が滑り、水が胸元にばしゃっとこぼれる。
Tシャツが一気に肌へ張りついて、胸の形が浮かびあがった。
しかも、先端がツンと立っているのまで。
(あ、やだ……)
張り付いた服をすぐに引っ張ろうとしたが、先生の視線が私の胸元へ落ちたのがわかった。
「…………っ!」
ばっと胸元を両手で押さえる。
見られた!?
今の、絶対見てたよね!?
ノーブラなのバレた?
ちくび、立ってたのまで見えた!?
いや、どっちも恥ずかしずぎるんだけど!
「〜〜〜〜っ」
恥ずかしさで頭がいっぱいになっていると、隣で先生が立ち上がった。
何も言わずに、廊下の方へ歩いていく。
……あれ?
少しして戻ってきた先生の手には、タオルがあった。
「って、ほんとそそっかしいよねぇ。はい」
「あ……」
何も言えないまま、差し出されたタオルを受け取った。
「すみません……」
「どういたしまして」
先生は何事もなかったみたいな顔をして、またソファへ腰を下ろした。
それだけ?
気づいてない?
見られてなかった?
それとも、見えてたけど……別に何とも思わなかっただけ?
もらったタオルで胸元を拭きながら、濡れたTシャツを見下ろす。
ホッとしたような。
でも、なんだかすごく拍子抜けしてしまった。