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「理想のイケメン」募集に、煙を纏う同期が立候補してきた。

第1章 現実エスケープ


あーあ、どっかにいいひと落ちてないかなあ。
背が高くって、お金持ちで、出来れば長男以外で
頭良くって、性格良くって、もちろん顔は良くって
で、私には超優しい人。



「そんなひと、何処にも落ちてないっすよ」

「は?」


目の前に人影が落ち、ふと横を見る。
こっちを馬鹿にする目で見ている人間がひとり。

屋上階段室に沿った死角。
古めのベンチで寝転がる私を見下ろす様にして煙草を吸っていた。
彼がふ、っと紫煙を漏らしながら笑っている。
 
社内禁煙を謳っている会社だが、屋上でこっそり煙草を吸う社員は少なくない。
ここは、そんな煙を愛する社員たちの隠れ場。
 
私はそこでちょっとサボってやりましょうと、
のんびりとひとり、日光浴を楽しむのが日課だ。
 
じりじりと肌を焼く太陽の眩しさが癖になる。
日焼けなんか気にしない。
熱くなったベンチの上で仰向けになるのが癒し。
 
もちろん一番の癒しはこの右手にある煙だということは忘れてはいけない。

「アズサさんはホント、サボり常習犯な上、独り言多いですね」

「人の独り言聞くなんて趣味悪いわね。
 サボってンのは結城くんも一緒でしょ」

結城くんは同期。同い年。
同期のクセに敬語で話してくる不思議な人だ。
私がここで日課の癒しを楽しんでいると、ふらりとやってきて煙の秘密を共有する。
  
「どうせ、また面倒な仕事押し付けられて逃げてきたんでしょ」
 
私は知っている。
彼は要領がいい。仕事も早く終えるし、量をこなせる。
でも、それを裏でセーブしないものだからどんどん仕事がまわってくる状態になっている。
 
あれ?これって要領悪いって言わない? まあ、どうでもいっか。

「まー、俺は出来る男ですからね」
 
自慢げな顔に殺意が沸く。どうせ私は出来ない女だ。
 
私は結城くんのためにベンチの上で伸ばしていた足を曲げると
小さく開いたスペースに彼が座る。

ベンチがギシリ、と音を立てた。
雨ざらしにあったザラついた私の特等席を半分だけ譲る。
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