• テキストサイズ

【H×H イルミ 】黒と白のアリア 

第5章 不協の兆し


額ににじんだ汗を袖で拭いながら、最後の数枚をどうにか並べ終える。
革紐で束ね、ほどけないように結び直す。

ふっと息を吐いた。

「イルミさん、並べ終わりました」

「あー、少し待ってて。すぐ終わる」

顔も上げないまま返される。

ニナはその場に立ったまま、手を下ろした。
肩が重く、指先に残ったインクの感触が、いつまでもこびりついていた。


やがてイルミは書き物を終え、束を受け取ると、ぱらぱらとめくり始めた。

「……うん」

指が止まる。

「ここ、三ページ目のこの修正……順番が逆だ。矢印の向きを間違えて読んでるね。……あと、この低音部の書き加えは、別のページのものと混ざっているな」

サラリとした口調で指摘される。

イルミは机に座ると、羽ペンを取り、ニナがまとめた束をあっという間に崩し始めた。
二、三枚を入れ替え、線を引き、余分な矢印を掻き消していく。

「まあ、急いでいたから仕方ないか。これでいい」

整え直された束が、軽く叩かれて差し出される。

受け取る指に僅かに力が入る。
ほんの一瞬だけ、何かを言いかけて――

「……申し訳ありません」

そのまま、飲み込んだ。

「うん。次からは気をつけて」

書斎に満ちるインクの匂いに、胸の奥がむかつくように重い。

そんなニナの様子を気にするでもなくイルミは言った。

「じゃ、それまた紐で綴って」

イルミは整えられた机を一瞥し、すぐに視線を切った。

「――それから、写譜も頼むね」

/ 84ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp