第2章 歪んだ共鳴
屋敷の居間の窓から差し込む淡い灰色の光が、石の壁と重厚な木製の家具をぼんやりと照らしている。
黒の腰までのジャケットを纏ったイルミは腕を組み、わずかに体重を片足へ預けた。
細く絞られた腰の線が一瞬だけ浮かび上がる。
感情の色をほとんど宿さないまま、容赦のない視線が、弟の小さな背中を静かに射抜いていた。
——逃げ場を与えない距離で。
キルアの指先から、力が抜け落ちる。
鍵盤の上に、沈黙が落ちた。
わずかに上下する肩へイルミの手が伸び触れる直前で、止まった。
「キル」
低く、抑揚のない声。
「お前の音はでたらめだ」
部屋の空気が、わずかに軋む。
ついに、キルアの手が鍵盤から離れた。
小さな背中が、ゆっくりと丸まっていく。
肩が震える。
銀色の髪が、淡い光を受けてかすかに揺れた。
「何故だかわかるかい?」
「……」
項垂れたまま、キルアは小さく首を振った。
「お前はこの曲を理解していないからだよ」
——言葉が続くのを、キルアは息を詰めて待っていた。
「耳で拾った音をなぞり、勝手な気分のままでたらめに鳴らしているに過ぎない」
イルミの言葉は闇のように、重くキルアを包み込む。
「音楽は形式に沿って形作られている」
「……形式?」
恐る恐る顔を上げる。
青い瞳が揺れていた。
「それ以外は、ただの雑音だ」