ヒロインを降りたら、君がいた 【ヒロアカ 爆豪(緑谷)】
第1章 君の隣には彼女が相応しいから…
「……今日、みんな凄かったね。でも、轟くんへのお祝いがあんな形で終わっちゃうなんて、ちょっと残念だったかな」
「あんな雑魚、瞬殺だろ。それよりテメー、何でさっきあっちばっか見てた」
勝己が指したのは、バックミラーに小さく映る出久たちの後ろ姿だった。
「え……別に、見てないよ」
「嘘ついてんじゃねぇ。しけた面して、今にも泣きそうな顔で見てただろ」
勝己の言葉はいつも鋭い。
隠していたはずの心が、剥き出しにされるような感覚。
「……お似合いだなって、思ってただけだよ。お茶子ちゃんなら、出久を支えていけるから」
「……チッ」
信号が赤になり、車が止まる。
勝己がハンドルを握ったまま、ふいに対話のギアを変えた。
「おい。テメー、何であの時、デクを振った」
心臓が跳ねた。
あれは、何年も前の中学の卒業式の日のことだ。
「……何のこと?」
「とぼけんな。中学の卒業式の日、あいつがテメーに告白したことくらい、知ってんだよ」
「えっ……何で、知って……。出久が言ったの?」
「あいつが俺に言うわけねぇだろ。見てたんだよ、偶然。……テメー、あいつのこと好きだったろ」
窓の外、流れる夜景が滲んで見える。
あの日、涙を堪えて笑った出久の顔。
私のことが好きだと言ってくれた声。
本当は、「私も好きだよ」と抱きしめ返したかった。
けれど、前世の記憶を少し前に思い出していた私は、お茶子の存在を思い出し、「正解」を選ばなければならないと思った。
「……好き、だったよ。今でも、大切だと思ってる。でも、私じゃダメなんだ。出久の隣は……」
「んなもん、テメーが決めることじゃねぇだろ」
勝己の声が、車内に低く響く。
「テメーはあの日、デク以上に泣いてた。……自分を殺してまで、何を守ろうとしたんだよ。……」
彼の言葉に思わず息を呑んだ。