ヒロインを降りたら、君がいた 【ヒロアカ 爆豪(緑谷)】
第1章 君の隣には彼女が相応しいから…
狭い車内で、勝己の吐息がすぐ近くで聞こえる。
「……か、つき、…………え?」
「……お前が、デクを好きになる前から、こっちは好きだったんだわ。いい加減気づけや。この鈍感女」
勝己は苛立ったように視線を逸らし、乱暴に髪を掻き上げた。
その耳の端が、街灯の光に照らされて赤くなっているのが見える。
「勝己が、……私を……? でも、そんな……そんな素振り、一度も……」
「お前以外は全員気づいてたわ」
吐き捨てるような言葉。
けれど、その中には隠しきれない独占欲と、長い年月耐えてきた執着が滲んでいた。
「……ガキの頃、テメーをいじめてたのも……クソ、認めるのは癪だが、男なんてのはな、好きな奴ほどいじめたくなる生きもんなんだよ」
あまりに勝己らしい、不器用で身勝手な理由。
でも、その「いじめ」があったから、泣いていた私を助けてくれた出久に私は恋をした。
もし勝己が最初から素直に接していたら、私の初恋の相手は、出久ではなくこの目の前の彼だったのかもしれない――。
「……テメーの初恋のきっかけが俺のせいだってんなら、最後まで責任取ってやる。……もう、誰にも譲らねぇ」
勝己の手が今度は優しく、私の頬に触れた。
「……これからは、俺だけ見てろ。いいな」
前世で憧れていた「爆豪勝己」ではない。
今、目の前で剥き出しの感情をぶつけてくる「勝己」の熱に、私の固まっていた時間がゆっくりと溶かされていくのを感じたーー。