ヒロインを降りたら、君がいた 【ヒロアカ 爆豪(緑谷)】
第1章 君の隣には彼女が相応しいから…
「「「ーー乾杯!!」」」
夜の静寂に、居酒屋の喧騒が響く。
今日は轟がNo.2ヒーローになったお祝いを兼ねたクラス会だ。
かつてのA組の面々は、大人になってもあの頃と変わらない熱量で笑い合っていた。
「……にしても轟、本当におめでとう!No.2か、マジ、すげーよ」
「ああ、切島。……だが、俺一人で上がったわけじゃない。皆がいたからだ」
「相変わらず真面目だな、お前は! ほら、主役なんだからもっと飲め!と言っても、ソフドリだけどな!」
上鳴や瀬呂が騒がしくグラスを差し出し、それを「ほどほどに!」と飯田が制止する。
傍らでは、爆豪が「……チッ、次は抜かす」と不機嫌そうにジョッキを煽っていた。
『ビーー!!南区二丁目ガレキ通りでーー』
だが、久々の集まりで楽しい飲み会の最中に鳴り響いた警報音と緊急要請に、轟のNo.2就任を祝う空気だった面々は一瞬でヒーローの顔へと切り替わる。
「これだから、なかなかアルコール飲めねぇんだよな」
現場へ急行した元A組の面々は文字通り瞬殺でヴィランを制圧した。
「短かったけど、今日はお開きにするか」
「また集まろ!!」
事件解決後いい時間だったこともあり、現地解散となった。
一度帰ろうとした出久が勝己と話した後、お茶子を追いかけて話しているのを私は遠くから見守っていた。
二人の間にある戦友とも恋人とも呼べるような、あの柔らかな空気。
(……うん。やっぱり、これがあるべき姿だよね)
胸の奥に小さな、けれど消えないチクりとした痛みを感じながら、私は一人で駅の方へ歩き出した。
その時、横に一台の車が滑り込んできた。
「おい、乗れ」
窓が開き運転席から勝己の不機嫌そうな声が響く。
「勝己?……でも駅、すぐそこだし」
「いいから乗れっつってんだよ。送る」
有無を言わせぬ圧に押され、助手席に乗り込む。
車内はまだ、新車の匂いがしたーー。