ヒロインを降りたら、君がいた 【ヒロアカ 爆豪(緑谷)】
第1章 君の隣には彼女が相応しいから…
車が再び走り出す。
勝己の横顔は、前世で推しとして憧れていたどのコマよりも、険しく、そして優しかった。
「テメーの人生は、テメーが主役だろ。誰に譲ってんだよ。……デクから身を引いて、一人で寂しいとか抜かしてんじゃねぇぞ。自己犠牲のヒーローごっこか? ヘドが出るぜ」
あまりにも彼らしい言葉のナイフが、私が勝手に作り上げていた「正しい結末」という壁を粉々に砕いていく。
「……勝己は、本当に容赦ないね」
「事実だろ。……おい、こっち見ろ」
車が私のマンションの前に止まり、勝己がエンジンを切ってまっすぐに私を見つめた。
「デクのことはもういい。あいつはあいつで、自分の手で今の幸せを掴んだんだ。あいつを選ばなかったのは、テメーの選択だ」
勝己の声は低く、ひどく落ち着いていた。
けれど、その瞳には今まで見たこともないような熱が宿っている。
「……次は、テメーの番だ。いつまでも過去の亡霊追いかけてんじゃねぇ。いい加減、他もちゃんと見ろ」
「え……?」
不意に、勝己の大きな手が私の後頭部を引き寄せた。
驚きで息を呑む間もなかった。
唇に、熱くて柔らかい感触が落ちる。
一瞬の、けれど深い口づけ。
離れた瞬間、頭の中が真っ白になって、私は言葉を失ったまま固まったーー。