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PRISM LINE【ワールドトリガー】

第2章 迷宮のダンジョン



「え、なにこれ」
「なにこれって、……みかん?」
「それは見りゃ分かる、俺が言ってんのは量のほう」
「あ、足りなかったです?」
「いや多すぎだろ、ふつう箱買いなんてしねーぞ」


だって出水くん、高校生って聞いたし、育ち盛りの食べ盛りだと、これでも足りないかなって思ったんですけど。

自宅の玄関に置いたみかんの箱ふたつを、突っ立って見下ろす彼とはどうやら感覚が違うらしい。こないだのお礼にと、早速買いに行ったのは好きだと聞いたから。
大学の食堂で持ってってやるよって言ってくれた張本人が顔を歪ませた。


「なんでそんな嫌そうな顔してんですか」
「そりゃするだろ。どうやって持ってくんだよこれ」
「担いで持ってって下さい」
「やだよ。途中まで出水に取りに来さすわ」


ダンボールの中心、きちんと貼られたガムテープの上をしゃがんでぽんぽん叩いて。あたしの足元にすり寄ってくる気配に気づいた太刀川さんがそのまま手を伸ばした。


「おー、ちっこいの、元気になったか?」


あれだけ威嚇して飛びつかんばかりの気性の荒さは、今じゃその影さえも見せなくなった。
子供特有の、好奇心の多さは人間だけじゃないんだなと、太刀川さんの指先をくんくん嗅いで、撫でろと頭ごと持ってく姿を見ながら思った。やめて、可愛すぎてニヤけちゃう。


「けどお前、よく飼う気になったよな」
「飼わない選択肢なんて最初からなかったんで」
「名前は?もう付けたのか?」
「……しし丸」
「ぷっ、なんだその名前、だっさ」
「いいでしょべつに」


誰にも迷惑かけてないんだし。このフサフサの毛並みがライオンみたいに見えたんだから仕方ないじゃないか。抱き上げて捏ねくり回す太刀川さんを睨んでみても、しし丸とじゃれ合う彼は気づいてない。

可愛い可愛いとあたしがするそれよりも力が入ってしまってたのか、そんなめちゃくちゃに撫でたら噛まれますよ、そう言うより先に、尖った小さな歯を手のひらに立てられてる。

それでもお構いなしな太刀川さんの手の中から、ほぼ無理やり黒いフサフサを奪い返して、代わりに無機質な白いスーパーの袋を渡してやった。


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