第1章 シークレットメロディ
「太刀川さんはなんでボーダーになったんですか?」
「あー、なんでだろうな。もう昔のことすぎて忘れたわ」
「物忘れが激しいのは知ってたけど、それも忘れたんですか」
「覚えてても得しないことは脳ミソの無駄遣いだ、って、そんな顔して見るなよ傷つくだろ」
呆れとも馬鹿にしてるとも取れるようなコイツの態度はいつも通り強気だった。本部から出た時より随分と顔色もマシにはなったけど。
出そうで出ない答えに必死こいてたどり着こうとしているような面持ちだけは、しつこく貼り付けてる。だからさ、そんな考えすぎるなっての。
「直感で動いてみればいいんじゃね?」
「直感?直感で?え?」
「大事な局面ほど野生的な勘って当たるだろ?」
「太刀川さんはもう少し人間的に頭使って下さいね、勘だけじゃなくて。そしたら試験もあんな酷い点数にならないと思うんで」
「お前ほんと可愛くないね」
「そんなこと言っても今更すぎて傷もつきませんよ」
「いやでも、ガチな話し、望月は人より考えすぎる節があるから、もちっと力抜けよってことな」
「あー、」
そこがコイツの良い所なんだろうけど。使い方を間違えると自分で自分の首を絞めかねない行為は見ていてヒヤヒヤする。
「それも一理ある、かも」
何でもほどほどにが一番いいだろ。俺が言ったって説得力のカケラもない言葉は飲み込んで。
寒空に消える二本の白い息。それを見ながら、無意識に口角が上がった。
どう結論を出し、どう腹に落とし込むのか。どっちに転んだとしても。
そう思うと、楽しみで仕方がなかった。