第3章 色づいて、舞い踊る
やめた。考えるのめんどくさい、というか今のこの疲弊感マックスな脳で考えたって最善の策が出るとは到底思えない。
コンビニの入り口から1番奥、お弁当を手に取って凝視する姿は端から見ればどれにしようか悩んでるように見えるんだろうけど、胃に入るものなんて正直なんでもいい。適当に取ったそれをカゴに入れて、飲料水の陳列してる方向に視線を投げれば、見たことのあるような顔が映った。
「あ、」
「………あぁ、こんばんは」
先に気づいたのは向こう。無表情すぎて一瞬誰だか分かんなかった。
昼間チョコをくれたあのカフェのウェイターの男の子が、ペットボトルの飲料水を片手に収めて立ってた。
「そこ、邪魔」
「すいません」
近付いて見下ろされて、感情の乗ってない言葉に耳を疑いそうになった。慌てて避けて、昼間の彼とのギャップに頭が付いてかなくて、絶賛プチパニックだ。
あれ、こんな愛想悪かったっけ。声のトーンまで低くなったような気がする。
「なに、なんか用?じろじろ見てんなよ」
「えっと、昼間あそこのカフェで働いてます、よね?」
「だったらなんなんだよ」
「……いえ、なんにもないです」
感じ悪っ。めっちゃ感じ悪っ。なにこの人。あまりの素っ気なさに一瞬違う人なのかと思ったじゃないの。
あたし同様、適当にお弁当を選んでレジに持ってく後ろ姿をただただ唖然と見送った。
仕事とプライベートはきちんと分けるタイプなのか?いや仮にそうだとしても、あの変わりようはどうかと思うよ?媚びの売れない、無愛想なあたしが言うのもあれだけど。
逆にそのあたしですらちょっと引くぐらいオンとオフの切り替えが激しすぎると思うんだけど。ここまでくればギャップと言うより豹変だ。
終わり良ければすべて良し。
1日の最後にいいことがあれば、その日起きた嫌なことなんて何もなかったかのようにふっ飛ぶのはよく知ってる。
終わり悪けりゃそこそこ引きずる。
少なくとも2、3日程度、ずっと悶々するわけじゃないけど、中々に後味は悪い。
帰ろ。こういう時こそしし丸のその愛くるしい姿を早急に見るべきだと、欲しいものをカゴに詰め込んで、レジの前、だれた店員にごはんよりも甘味の割合が極端に多いカゴをどかりと置いてやった。