第1章 シークレットメロディ
「別に無理して引き受けなくてもいいんじゃね?」
ここらが妥当なんだろう。意外な返答をしたつもりはないが、目を丸くしたコイツの間抜け面が面白い。
迅だって、もうその手立てしか考えられない所まできているのかと言うと、それは違うだろうし。複数の最善で、一番安全かつ穏便な道を選んだだけだろうし。
損得勘定の上手さをひた隠しにして、さもお前の力が必要なんだとばかりに物申すのはアイツのやり口だ。けどそれに乗っかる必要もない。
「でもあれはさすがに堪える。自分のことだけ考えてればいい範囲を越えてますよね」
そもそもが真面目な性分と深く物事を考える癖が仇となって、堂々巡りな思考を持て余すコイツのことを、ここ数ヶ月で難なく見切った迅は素直にすげーなと思うけど。
だからあんな風に、どが付くほどのストレートで投げたんだろうけど。
自分の気持ちまで抑えて嫌々こなせるほど、こっち側の仕事は甘くないのも知ってる。知ってるからお前がボーダーになったら面白そうだとは思っていても、無理強いはできないし、してほしくはないんだよな。
「別にお前に全責任があるわけじゃないだろ、そういう可能性ってだけで、ダメならアイツはまた考えるさ。得意分野だろうし」
「太刀川さんが言うとすっごく軽く聞こえる」
「重くしたって仕方ねーもん」
「あたしは現在進行形でめちゃくちゃ気分が重いですけどね」
「体重もそこそこ重かったぞ?」
「うわさいてー」
よっこらしょ。ババアみたいな掛け声と共に立ち上がった望月が歩みを進める。冗談が通じたのか通じてないのか、含みを持たせた表情で俺を見上げた。