第9章 再会/シリアス ※糸師冴
繭は声色を上げて真逆に空気を切り替えた。
わざとらしいまでに、不思議めいた顔を作り、首を傾げて言った。
「ソレ、直接聞いたら?」
この一言はただの感情のしわ寄せ、つまりはイヤミだ。
その意図が冴には全てばれていることもわかっている。
繭が思うに、冴はともかく、凛はまだ冴とまともに話そうとはしないはずだ。
そして、“なぜまだ繭といるのか”なんてことを凛は考えていないし認知すら出来ていない可能性は高い。
仮に深層心理に理由があったとて、処理し、整理し、言語化して説明なんて無意味なことは絶対にしない。
繭でもわかることを、冴が考慮していないはずがない。だから、この場を使ってきたとも言える訳だ。
「じゃあね」
繭は冴の横を過ぎ、歩き出した。
===
その場を離れて繭が得たのは、不快な方の開放感だ。
張り詰めていたものが一気に崩れ重たくなるような感覚になる。
なるべく呼吸を深めながら、脚を早くする。
その場を離れて10メートルを過ぎた時、急な違和感が来る。
「あ……っ……え?!」
ぱたぱたと視界の下方に入る鮮血が誰のものなのか、一瞬わからなかった。
胸元に目をやれば落ちる血が服に染みこみ、赤いシミが少しづつ増えている。
それが鼻から来るものであるのがわかり、思わず左手の甲でそれを覆い、反射的に上を向いた。
バッグの中にハンカチタオルはあったはずだ。
ただ片手の感触だけではうまく探し出せず、仕方なく視線と左手を使えばさらさらした血液が唇を伝うのがわかる。
また上を向き、左手を鼻に被せた。
喉に落ちるのは久々に感じる血の味だ。
顔を歪めて一度それを飲み込んだ。
繭の焦りが深くなる。