第9章 再会/シリアス ※糸師冴
繭は右手でバッグを漁りながら言った。
「……ティッシュ持ってるから、詰める」
「それ、傷広がるからやめろ」
「……そうなの?」
「圧迫で止めろ」
「……わかった」
繭は大人しく右手を引っ込めた。
冴は繭から視線を外す。
「そのまま押さえて帰れ。家着く頃には止まる」
「……うん」
「顔はそんなに汚れてない」
「…………うん」
こういう時、人間は感情が優位に立つものだ。
対処に加えて、人目への配慮という視点が見えるのは、情緒を揺らす要素になる。
だからと言ってなんてことはない。今は、そういうものが染みる絶妙なタイミングなだけだ。
繭は一歩後ろに脚を引き、冴の顔を見ないまま言った。
「……タオル、ありがとう」
「後で捨てろ」
「…………じゃあね」
「ああ」
繭としては、気持ちを優先するならば走ってこの場から離れたいのが正直なところだった。
ただ、それをすると何かの抑止を投下される気はする。
だから、ぎこちない足取りのままその場を離れた。
手に触れるハンドタオルにやたら力が乗る、繭自身でもそれがよくわかった。
やり場のないものを押し付けるために、そうせざるを得なかった。
Fin