第7章 交渉/ほのぼの?極微糖
繭の指先を振り払うように、素早く動く凛が取り出すのはスマホだった。
ちらりとだけ見えたのはタイマーの画面で、放るように置かれたスマホがテーブルの上で物理音を立てる。
「15分だ」
「……」
「どけ」
「はい」
繭は言われるまま、素早く顔を上げた。
ひとまず、条件付きの許可は得たということだ。
凛が片手で引き寄せた教科書から紙のめくられる音が出る。
58ページで一旦全ての動作が止まった。
次に、凛は片手をテーブルにつき背丈のある身を伸ばす。その目的は先ほど投げられたカーペット上のシャーペンだ。
3行目と真ん中下あたりにだけ、乱雑な線が引かれる。
教科書を強引に押して移動されるとテーブル隅にあったノートが今度は反動で下に落ちていった。
「ここだけ覚えろ。暗記じゃねぇ、文法の意味拾え。パターンで刺せ。あとは捨てろ」
「……はい」
「鳴るまでにわかんねぇ所聞け。プリントは後で叩き込め。他は自分で何とかしろ」
「……はい」
とりあえず、落ちたノートを拾って線が引かれた一文を書き写してみる。
「今度ジュースおごるね……」
「いらねぇ。やれ」
「……はい」
繭としては、ありがとうだとか、ごめんだとか、ここでは凛に疎まれるヤツだと知っている。
だからこそのジュースは賭けだったが、これは不成立に終わった。
Fin