第7章 交渉/ほのぼの?極微糖
「違ぇ」
「……」
「そこ違ぇ」
「…………」
「違うっつってんだろ」
「…………………………」
逐一、横から接続詞がだとか不規則動詞がだとかの説明は聞こえるのだが、凛の説明は淡々と早いし情報が最低限で、繭としてはそれだけでは理解にまで落としきれないのだ。
この時間がフラストレーションになっているのはお互い様で、いよいよ舌打ちまで聞こえてくる。
「貸せ」
横からプリントを無理矢理抜き取られた。
凛はテーブルに転がるシャーペンを取り、プリントに添削を始める。
「ここいらねぇ。ここも」
「……」
「ここ、テストで出来てた所じゃねぇか」
「……」
「ミスが酷ぇ。まずスペル正確に覚えろ」
「……」
以外と早く、プリントはスライドされて繭の手元に返ってくる。
ただ、状況は良くなったとは言えそうもなかった。
「もうちょい丁寧に書いて欲しい、読めない……」
「読める範囲だ。あとは文脈で読め」
「要所の単語がわからない……」
「自分で調べながらやれ」
「朝までかかるよ……」
「…………」
凛の冷えた視線が、空気を一気に重たくする。
「やる価値ねぇよ」
投げられたシャーペンが飛ぶ。それがテーブルで一度跳ねてカーペットにまで落ちた。
凛はテーブルから身を引き、思い切り視線を窓の外にまで投げてしまう。
「……はぁ……」
繭は小さな溜息をつく。そして、テーブルに顔を落とした。片頬にはテーブルの堅い感触が通る。
匙を投げる凛が繭を含むこの空間ごと投げ出すのは、これでは時間の問題だ。