第6章 感情的な理屈/日常微ギャグ
「……っ」
「どうしたの?」
「……繭から、女子のいい匂いがするっぺ……」
七星から独り言のように出る話題が新鮮過ぎて、繭の目が大きくなる。繭はそのまま七星を横から真っ直ぐ見た。
「………………」
「な、え?き、気まずいっぺ」
「いや。指摘の矛先にびっくりしたなって……」
「え!?今のNGだっぺ!?女子が久々というか、なんかごめん!」
「いや私こそ。あえて指摘して、なんか、ごめん……?」
「……っ癒されるモノを感じるっぺ……」
「あはっ 何それ、私今徳を積んだってコトかな」
「……で?」
会話を遮ったのは凛の声と、テーブルの真ん中に押しつけるように置かれた注文のタブレットだった。心底どうでもいい会話を今すぐやめろ、雰囲気がそう言っている。
繭はタブレットを手に取り、とりあえず“季節のおすすめ”を開いてみる。
「ボスが怖いからそろそろ注文しよう」
「おお!マフィアのボス!?凛さん似合いそう」
「サングラスかけてそう」
「真っ黒いスーツ着てるやつ」
「……なのに頼むものがモンブランなのじわる」
「ギャップ萌えだっぺ」
「萌えと対極にいそうなのに」
「……いつまでかかんだ」
発散ばかりで全く収束しない会話に、またも牽制が落ちる。
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注文を終え、繭はドリンクバーに目を向ける。
そのまま視線を凛に移した。
「私、アイスティーとガムシロ。ミルクいらない」
「……」
「取ってきて」
「は?自分で行け」
想定内の回答だが、理由はある。
繭はドリンクバーを指さした。
「そこからが一番近いし」
「関係ねぇ。お前行け」
「俺!?まあいいけど」
「一番非効率。私の動線考えてよ」
「んじゃあ……公平にじゃんけんにすっぺか」
七星の出した妥協案は素晴らしい。繭の視線に熱が乗る。
「なるほど。……天才?」
「ええぇ!?大袈裟だっぺ」