第5章 魅力/日常微糖
カブトムシやクワガタムシ、これは明らかに違う。現状では思いつく対象はいないが多分ヒーロー、憧れ、こういう類のものが分類されるイメージはつく。
時折こちらの歩調に反応し派手に飛び上がるバッタはどうだろう。繭にはそれほどの鋭い主張や関与はないし、しいて言えばここはブルーロックレギュラー陣あたりか。
ハエや蚊のような害虫ほどではないが時にはノイズとなり得る存在なら、今まであげた中では一番近い気はする。
ただ、これも似ていて微妙に違う。繭は近寄ってはくるが内側に入ってきたり接触をする感覚はない。先ほど繭がレイヤーと言ったヤツだ。
勝手に近寄ってきてもこちらが追い払う前に、適切な距離に一人で戻ってゆく。
もっと薄い原っぱの構成要素である花や木や草なのか。でもこれも違う。あるべくしてあるものかといえば必須ではない。ここは衣食住や生活に該当するものになるのだろうか。
じゃあ、繭は何だ。やはり昆虫か、では適切な昆虫は何になるのだろう。
駅に着く。凛は黙って電車を降り、そのまま真っ直ぐ改札までの階段を下った。
真ん中あたりの改札口で定期を通し、なるべく人の少ないルートを短く進む。
そして、ふと、ひとつだけ思いついた。
後をついてくる繭は手のひらで首元を仰ぎながら、目を細め外の空気を暑がっている。繭の中では先ほどの話題は既に終わったようだが、相手の都合は関係ない。
凛は二、三歩だけ歩調を緩めた。
「つまりアレだ」
「ん?」
「てんとう虫だ。お前は」
「…………は?」
凛にもさすがに言葉が足りない自覚はあったが。
自分が納得を得たのだからそれでいい。他人の理解にまで興味はないし説明の義理もないのだから。