第5章 魅力/日常微糖
それ自体が無駄だと先ほどから叩いているのに、ここまで形にされ目の前に差し出されたら一瞬でも反射的に中身を拾ってしまうのが人間だ。
繭はズレを感知する感覚、それを構造化する思考、言語化する能力、こういうものは多分強い。
だから何がどうという話ではない。本人の持つものを何に使うかは凛には関係ないし勝手にすればいいが、なんの結果にも繋がらない無意味なものに消費することの意味は 最初から最後まで全く理解が出来ない。この点は変わらないだけだ。
「回す先が無駄だろ」
「……」
繭はようやく押し黙る。自分であげた議題の通りで、話していても永遠に平行線、繭にもそれはわかっているはずだ。
微かに頬を膨らませ繭は視線を前に戻す。納得はしていないが、このまま続けても結論は得られないとはわかる。ただ、そこまで実利的には処理が追いついていない。そんな感じだろう。
繭のいう違和感、ズレみたいなもの自体は確かにある。
ただ、それはミクロに見たポイントの話ではなく、よりマクロに捉えた時のその人間のポジションみたいな話ではないのか。凛にはなんとなくそんなイメージが出る。
「わ……外、暑そう~」
懲りずに独り言を出す繭の声と共に、視界に入り込んでくるのは電車の窓に広がる大きな河川敷だ。
例えば、原っぱみたいな場所で例えるならどうだろうか。
繭はゴキブリや蜂のような害虫ではない。これは明確な排除対象、該当するのは糸師冴や潔、時に士道みたいなヤツのことだ。
派手さのある蝶かというとこれも違う。繭にはそこまでの存在感や特別感はない。ここにあたるのは好意的対象みたいなものだろうか。例えば好きな食べ物や好みの過ごし方だとか。
足下でただ行列をなすアリはどうか。何やらうじゃうじゃ大量にいるが、どうでもいいし気にもならないので ここは視界に入りもしないモブ枠だ。そうかというと繭はこことはややズレる。