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〈短編〉ブルロ 糸師凛

第5章 魅力/日常微糖


「見て分かんねぇなら、無駄だろ」
「わかろうとすることに意味がある?」
「必要ねえだろ」
「…………」


少しだけ、繭は目元を細めた。
いかにも凛らしい価値観ではある。

自分にとって不要と判断する話題は、すぐに切り捨て勝手にたたむ。こちらがやっていることを正面から否定はしない。けれど、理解も開示もしないし踏み込みも許さない。
他人が何に興味があるのかには、凛には関心がないからだ。


少しだけなのか、ほとんどなのか、いつも何かがズレているのだ。
繭は方向性を変えて、別の話題を出してみる。


「これ多分ソッチも感じてると思うけど」
「……」
「会話、噛み合ってないよね」


繭は視線を前に固めたまま、手を顎に添え言葉を選び、独り言を続けている。


「んー……違う観点で話してるっていうか……でも全く別のこと話してるのとも違くて……

なんだろう、お絵かきアプリのレイヤーの違いみたいな。

同じ対象を、例えばリンゴ描いてるんだけど私は色のレイヤーで頑張ってて色合いとか質感の話ししてるのに、でもソッチは輪郭のレイヤーからものを見てて境界線どう引くかみたいな観点でリンゴを見てる。

だから全然噛み合わないんだけど、でも全く別ものを描いている訳じゃないから、合わないけど完全な意味不明までにはならないというか……」
「……」
「だから“いいね!”とか“わかる!”とか普通の会話にならない。でも“こいつ二度と関わりたくない”っていうほどの違和感ではない……
同じ場所で共有しているものがあるかっていうと違う気がするから……多層みたいな感じかなって思ったんだけど……」
「……」
「伝わる?」


繭は急に身を乗り出し、子供みたいな黒い目で見上げてくる。凛にすればこの繭の様には、少しだけアンフェアさが見える。



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