第5章 魅力/日常微糖
「…………」
そうだ、凛の最大の魅力はこういう所だ。
快とも不快とも言えない冷えた感覚を覚える時がある。
例えるなら、自分という調和された人間の中に、先鋭的な異分子を容赦なく押し込まれるような瞬間。
外見や能力といった連続性の中にではなく、時々表ににじみ出る一瞬にこそ、引っ張られそうになるのだ。気質、価値観、癖、ある程度は理解しているつもりだったが、認知を超えたズレみたいなものが見える時がある。
その常人を超えたアウトプットは一体どこから来るのだろうか。
その数式が見えないから腑に落ちないのだ。
思考の範囲ではじき出した結論になるのか、感情面で起こる不穏を止めるための逆算なのか、もっと奥にある精神性みたいなものから生まれるものなのか。
あるいはそれらのブレンドなのか、だとしたら割合はどうなっているのか、発動のトリガーは何か、いつから持っているのか。浮かぶ問いに対して、得られる報酬が少なすぎている。
「……気持ちわりぃぞ」
「……言い方……」
視線で睨まれた。繭は一度大きく呼吸してから、視線を前に戻した。
「……ナカ、どんななんだろうって……」
「……は?」
訳のわからないことを言う繭を細い視線のまま見れば、目の色は変わっていない。これは何かを思考し分析にかけ、自分の脳内にトリップしている人間の目だ。
相手を理解したいとか、共感したいとか、自分もそうなりたいとか、そういうことではなく ただ対象を外側から観察し、解析しようとしている。
内側に踏み込むようで、実は距離を取り外側から見極めようとしている。質問でもなく詮索でもない、純粋な好奇心と言えば正しいだろうか。その概念は理解出来る。
ただ、凛から見ると 観察対象が何の利益にもならないものである点は意味がわからないので 強い呆れの感覚を持つ。
「……暇か」
「暇ではない。今、考えてるし……」
凛からすれば 考えることに価値を置いた所で、それが建設的にはならないのだから この時間も会話も、繭がさいている労力にも必要性を見いだせないのだ。