第4章 【直哉×無関心女中】
は、手に持った道具を整理しながら、困ったように眉を下げた。
「……そうでございますね。あの方は、本当に美しゅうございました」
嘘偽りのない言葉だった。
透き通るような生地を纏い、直哉の横で泰然と笑っていた女性。
それは、が生まれてから一度も目にしたことのない、絵画のような完成された「美」だった。
けれど、あまりに違いすぎた。
月とスッポン。
天と地。
そんな言葉すら生温いほど、自分とその女性の間には、埋めようのない深い断絶がある。
「私のような者が、あの方と比べるなど……。
現実味が湧きませんわ、直哉様」
彼女にとって、それは「悔しい」とか「羨ましい」という感情にすら辿り着かない、遠い世界の出来事だった。
直哉がどれほど言葉のナイフで彼女を傷つけようとしても、彼女はそのナイフがどこを狙っているのかさえ、理解できないのだ。
その、徹底した「無欲」と「無知」。
直哉は、彼女のそんな表情を見るたびに、言いようのない焦燥感に駆られる。
「……ほんま、面白うない。
お前、自分がどれだけ惨めかも分からんのか」
直哉は苛立ち紛れに、緩んだ帯を乱暴に締め直した。
彼女を辱めることで得られるはずだった優越感は、霧のように消えていく。残ったのは、夜の静寂の中で、淡々と作業を続ける彼女の音だけだった。