第4章 【直哉×無関心女中】
直哉は苛立ち紛れに、緩んだ帯を乱暴に締め直した。
どれだけ言葉を尽くしても、豪華な衣類や女を見せつけても、目の前の女は「羨ましい」という感情すら抱かない。
それが直哉には、自分の生きる華やかな世界そのものを否定されているようで、無性に腹立たしかった。
「……お前は一生、その泥の中で虫みたいに這いつくばってりゃええわ」
吐き捨てるように言い残し、直哉は乱暴な足取りで自室へと消えていった。
一人残された廊下で、は静かに手元を片付ける。
直哉が通り過ぎた後の空気には、濃厚な香水の匂いと、彼特有のひりついた熱気が残っていた。
彼女はふと、自分の手を見つめる。
節くれだった指。
先ほどの美しい女性の、白く細い指先とは似ても似つかない。
「……本当に、綺麗だった」
独り言のように零れた言葉に、悲しみはなかった。
ただ、遠い夜空に光る星を眺めるような、純粋な感嘆だけがあった。
彼女にとって、直哉が連れてくる「外の世界」は、いつだって眩しすぎて実感が持てない、一時の夢のようなものだったから。