第4章 【直哉×無関心女中】
夜が更け、屋敷の静寂が深まる頃。
遠くで、高級車のエンジンが夜気を切り裂いて走り去っていく音が聞こえた。
ほどなくして、部屋から直哉が姿を現す。
昼間の隙のない身なりとは打って変わり、着物は大きくはだけ、帯も緩んだまま。首筋には微かに香水の匂いを残した、酷く着崩した姿だった。
彼は廊下を渡りながら、ふと、まだ微かに灯る明かりの下で片付けをしていたを見つけた。
「……まだ起きとったんか。ほんま、機械みたいに働くなぁ」
直哉は壁に背を預け、気怠そうに彼女を眺める。
その瞳には、情事の後の虚無感と、それすらも彼女にぶつけようとする、歪んだ執着が透けて見えた。
直哉は壁に肩を預けたまま、だらしなくはだけた胸元を無造作に掻いた。その瞳には、快楽の残り香よりも、目の前の女に向けられた純粋な不快感の方が濃く滲んでいる。
「……さっきの女見た後にお前見たら、ほんま気が悪くなるわ」
吐き捨てるような言葉。
直哉は、わざとらしく鼻を鳴らしてを検分するように眺めた。
「女っちゅうのは、あぁやって綺麗に着飾って、男を悦ばせて、そうやって初めて『価値』が出るもんなんや。
お前みたいに泥にまみれて、誰にでも代えのきく仕事して……そんなんで生きてて楽しいんか?」
直哉の言葉は、ただの蔑みではない。
自分たちが生きる「華やかな、価値ある世界」と、彼女が這いつくばる「無価値な土の上」を、残酷なまでに線引きしようとする執拗さがあった。