第4章 【直哉×無関心女中】
ーー数日後、空は抜けるように青く、庭の緑が目に刺さるような昼下がりのことだった。
は、縁側に近い植え込みの間に膝をつき、湿った土に指を這わせて雑草を抜いていた。
泥にまみれた手、日差しを避けるための古びた手拭い。
彼女の姿は、手入れの行き届いた美しい庭の景観の中で、唯一の「汚れ」であるかのようにそこにあった。
その時、廊下を渡る賑やかな足音が近づいてくる。
「。またそんなとこで這いつくばっとるんか」
直哉の声だ。その隣には、彼が連れてきた一人の女がいた。
都会の空気を纏った、目の覚めるような美貌。
体に張り付くような絹のワンピースは、陽光を反射して艶やかに光っている。
禪院家の重厚な木造建築の中で、その女の存在だけが極彩色に浮き上がっていた。
直哉はわざとらしく足を止め、女の肩を抱き寄せながら、泥まみれのを見下ろした。
「見苦しいなぁ。客人の前でそんな見窄らしい姿晒すなや。
お前みたいな地味な女が庭におると、せっかくの景色が台無しやわ」
直哉の言葉は、ただの注意ではない。
隣の女に、自分の所有する「世界の格差」を見せつけ、優越感を共有しようとする卑俗な儀式だった。
女は、直哉に促されるようにしてへ視線を落とした。
鑑定士が安物の瓦礫を見るような、冷ややかな、けれど徹底的に無関心な瞳。
女は一言も発さず、ただ鼻をかすかに鳴らすと、興味を失ったようにふいと目を逸らした。
言葉を交わす価値すらない、道端の石ころと同じ扱いだった。
「行こうか。……こんなもんに構っとる時間は、僕らにはないしな」
直哉は満足げに鼻で笑い、女を連れて奥の私室へと消えていった。
パタン、と閉まった襖の音。
は、投げかけられた侮蔑を拾い上げることもなく、再び指先に力を込めて、根の張った雑草を土から引き抜いた。
彼女にとって、美人の沈黙も直哉の嘲笑も、止まることのない時間の流れの一部に過ぎなかった。