第3章 【直哉×魔性女中】
直毘人は酒瓶を置くと、床に這いつくばる奥方を冷たく一瞥し、無造作に言い放った。
「その女とは離縁させよう。
……それでええな、直哉。これ以上の騒ぎは家格に関わる」
「離縁?」
直哉は鼻で笑い、欠けた歯を押さえて震える奥方を見下ろした。
「そんなんで済むか。
の受けた痛み、この女に何倍にもして返してやらんと気が済まへん。
…殺さな、気が済まんわ」
直哉の瞳に宿る殺意は消えない。
が必死にその腕を掴んで制止するが、直哉の逆立った神経は、復讐を完遂することだけを求めていた。
「——なら、これはどうや」
直毘人がニヤリと、どこか残酷で愉しげな笑みを浮かべる。
「空いた正妻の座に、を据えてやる。……これ以上の解決策はあるまい」
「……っ!?」
直哉の動きが、凍りついたように止まった。
傍らで震えていたも、目を見開いて直毘人を見上げる。
「正妻に……を?」
「左様。
今、この機を逃せば、この女は一生『日陰の愛人』止まり。
お前が当主になればなおさら、血筋のええ別の女を娶らねばならん。
……だが今、この不祥事の落とし所としてこいつを正妻に据えれば、誰にも文句は言わせん。……お前にとっても、これが最高の『復讐』であり、『報酬』やろうが」
。