第3章 【直哉×魔性女中】
ドゴォッ、という鈍い衝撃音が部屋に響き渡った。
「……あ、……っ」
あまりの衝撃に、奥方は叫ぶことすらできなかった。
床に転がり、口から溢れた鮮血とともに欠けた奥歯が畳に転がる。
高貴な正室の顔面は無惨に腫れ上がり、彼女は信じられないものを見る目で夫を見上げた。
「なんで……! 直哉様、わたくしは貴方の、妻で……!」
「黙れ、不細工。これ以上醜態を晒すな」
直哉の瞳には、一切の情けがなかった。
それどころか、彼は倒れ込む奥方の髪を掴み、さらに拳を振り上げる。
殺意の塊となった彼の呪力が、周囲の空気をピリピリと震わせる。
「……を傷つけた報い、その身体全部で払わせてやるわ。殺す、殺してやる……!」
直哉が再び動こうとした瞬間、背後から血の匂いを纏った影が飛び込み、奥方の身体を覆い隠すように覆い被さった。
「おやめください! 直哉様、…落ち着いてください!!」
腕の傷から血を滲ませたまま、が必死に叫ぶ。直哉の冷酷な拳の直下に身を晒し、彼女は震えながら、しかし退くことなく奥方を庇い続けた。
「どけ、。……その汚い女を触るな。汚れるわ」
「どきません! これ以上は……これ以上は、取り返しのつかないことになります……!
お願いです、そんな罪を背負わないでください……!」
「……っ、どけ言うとるんや!!」
直哉の怒号。
しかし、は目を閉じ、しっかりと奥方の身体を抱きしめたまま動かない。
直哉の拳が空を切って止まり、怒りに打ち震える。
最愛の女が、自分を傷つけた張本人を庇う。その矛盾が直哉の頭をさらに狂わせる。
「そいつは……そいつは、お前を汚したんやぞ! 俺の、俺だけのに……傷を……!!」
「わかっています! もう誰にも振らさせませんから
だからもう、おやめください……っ!」