第3章 【直哉×魔性女中】
「……何でもない訳ないやろ、こんな深い傷!」
直哉の怒号が静かな別邸に響き渡る。
は必死に袖を戻し、傷を隠そうと身体を丸めた。
どれだけ問い詰められても、唇を噛み締め、決して犯人の名を口にはしない。
自分さえ黙っていれば、これ以上禪院の家が壊れることはないのだと、自分に言い聞かせて。
だが、直哉の三白眼に宿った昏い知性は、彼女の沈黙から正解を導き出した。
「……あの女か」
低く、温度のない声。
直哉の瞳から激情が消え、代わりに底知れない冷たい光が灯る。彼は一言も発さず、ただ、獲物を仕留めるために歩き出す猟犬のような足取りで、本邸へと向かった。