第3章 【直哉×魔性女中】
「、 ただいま、帰ったぞ」
予定よりも早く任務を終えた直哉が、弾んだ声で部屋に踏み込んできた。
彼は玄関で草履を脱ぐ間も惜しむように彼女に駆け寄り、いつものようにその細い体を抱きしめようとした。
「……っ」
不意に、傷口に直哉の手が触れる。激痛に、彼女の肩が微かに跳ねた。
直哉の鋭い三白眼が、一瞬で温度を失う。
「……今の、何や。痛がったか?」
「いいえ、少し驚いただけですよ。おかえりなさいませ、直哉様」
微笑んで誤魔化そうとする彼女。
だが、直哉の鼻は、部屋に微かに残る「鉄の匂い」を逃さなかった。
「嘘つけ。……腕、見せろ」
「直哉様、何でもございませんから……」
「見せろ言うとんのや!!」
直哉は逆上したように彼女の手首を掴み、袖を乱暴に捲り上げた。
白かったはずの包帯が、止まりきらない血で赤く滲んでいる。その凄惨な光景に、直哉の瞳から光が消え、どろりとした狂気が宿った。
「……誰や。誰が、俺の女に指一本触れた」
低く、地這うような声。
直哉の体から、術式の余波を孕んだ凄まじい圧力が溢れ出す。
隠そうとした彼女の配慮は、皮肉にも、直哉の中に眠る「怪物」を完全に目覚めさせてしまった。