第3章 【直哉×魔性女中】
薄暗い行灯の光が、重なり合う二人の肌をなまめかしく照らし出す。
別邸の奥まった寝室には、もはや「主従」の境界など微塵も残っていない。ただ、一人の女に狂わされた男の、剥き出しの肉欲が渦巻いているだけだった。
直哉は彼女の豊かな肉に深く、深く埋まりながら、一心不乱に腰を振り続けた。
ドロドロに溶けた脳裏には、もう自分の名前も、禅院家の重圧も存在しない。あるのは、自分を包み込み、甘やかす彼女の熱い内側だけだ。
「あー……あーっ、……♡っ」
直哉の口からは、当主としての威厳をかなぐり捨てた、喉を鳴らすような喘ぎ声が漏れ出す。
焦点の合わない、熱に浮かされた瞳。彼は夢遊病者のような手つきで彼女の頬を撫で、うっとりとその顔を見つめた。
「ああ、ほんまに……ほんまにお前は可愛いなぁ。……世界で一番、愛しとる……」
彼女は、そんな直哉を壊れ物を扱うように抱きしめ、汗ばんだ背中を優しくなぞる。
その瞳には、かつての凪のような静けさはなく、自分を崇める「坊ちゃん」への深い慈しみと、独占欲が宿っていた。
「……直哉様。本邸でのことは、よろしいのですか? 奥様が寂しがっていらっしゃるのでは」
行為の最中、彼女が困ったように囁くと、直哉は吐き捨てるように、しかしどこか縋るように声を荒らげた。
「あんなもん……しらんわ! 誰が、あんな気色の悪い女に触れるか……。
指一本、かすらせるのも嫌や。俺が触れたいんは、お前だけや。お前以外の女は、全部呪霊と同じや……っ」
直哉は、彼女の首筋に鼻を押し当て、その甘い香りを肺の奥まで吸い込む。
「可愛い、可愛いわ、…。
お前なしじゃ、俺はもう息もできん……。愛しとる、愛しとる……っ!」
彼は再び狂ったように腰を突き立てた。
天女のように穏やかだった彼女を、自らの情欲で泥沼へと引きずり下ろしたつもりでいながら、実際には自分こそが彼女という深い海に沈んでいく。
彼女は直哉の金髪を梳き、耳元で「私もですよ」と甘く囁く。
その一言で、直哉はさらに深い陶酔へと突き落とされ、本邸での孤独な冷酷さを全て、彼女の身体の中に吐き出していった。