第3章 【直哉×魔性女中】
直哉は飢えた獣のようにを求めた。
「もっと、もっと強くなる……。
親父も、他の奴らも、全員黙らせたる。
禪院家を俺の思うままにしてやるから……」
直哉は彼女の白い首筋に歯を立て、必死に言葉を絞り出す。
それは次期当主としての抱負などではなく、彼女に愛されるための、たった一つの「交換条件」だった。
「だから、愛してくれ……。
俺のこと、愛しとるって言うてや。
……なぁ、…」
その悲痛なまでの執着に、彼女はそっと目を細める。
そして、熱に浮かされた彼の耳元に、とろけるように甘い声を流し込んだ。
「ええ、愛しております。直哉様……。
もう私の負けです…
あなたを立派にして差し上げたかったのに…」
「……っ、…」
「あぁ…こんなに一生懸命になられて、本当に可愛らしい……」
その言葉は、直哉の理性を完璧に破壊した。
本邸では誰よりも傲慢で、誰にも膝を折らない冷酷な男。そんな彼が、彼女の腕の中では、たった一言の「褒め言葉」に翻弄される幼子のように、その瞳をトロンと蕩けさせていく。
「……あ、あぁ……。もっと、もっと言うて……」
「はい、はい。こんな必死に腰を振られていじらしいお方…」
彼女の指先が、行為の最中に直哉の金髪を優しく梳き、耳朶を甘噛みする。
「女中」としての節度も、「天女」としての潔癖さも、今の彼女にはない。
そこにあるのは、自分に依存しきった男を、言葉と愛撫でどこまでも堕落させていく、一人の女の深い情愛だった。
「……っは、ぁ……! 、お前……、お前、最高や……」
直哉の腰の動きはさらにがむしゃらになり、彼女の言葉一つ、吐息一つに敏感に反応して、震えを繰り返す。
彼女に甘やかされ、褒められ、肯定される。その快楽は、どんな術式の極致よりも直哉を陶酔させた。
彼は彼女の胸に顔を埋め、赤子のようにその名を呼び続ける。
自分が「一人の男」として彼女を抱いているのか、それとも「坊ちゃん」として彼女に抱かれているのか。
その区別すら、もはやどうでもよかった。
「愛しとる……、愛しとる、…!」
「私もでございます。私の、直哉様……」
直哉は彼女の甘い囁きに、二度と浮き上がれないほど深い愛憎の淵へと溺れていく。