第3章 【直哉×魔性女中】
唇が離れた瞬間、直哉の喉からは、獣の呻きにも似た熱い吐息が漏れた。
視界は熱に浮かされ、目の前の彼女の姿だけが異常なほど鮮明に焼き付いている。
彼はそのまま、抗うことのない彼女の体を畳の上へと押し倒した。
「……っ、ああ……やっと、やっとや……」
彼女をその腕の中に組み伏せているという事実に、直哉の全身は歓喜で激しく震えた。
十歳の頃から、指先一つ触れるのにも、の許可を乞うような心地でいた。
どれほど実力をつけ、当主として誰かを跪かせようとも、彼女だけは決して手に入らない、遥か高みの「天女」だったのだ。
その彼女が今、自分の下で、乱れた髪を散らしながら静かに瞳を閉じている。
喉が、熱い鉄を飲んだように締め上がる。
込み上げてくるのは、ただの欲情ではない。もっと暗く、深く、執念に近い「所有」への渇望。
「愛しとる……、愛しとる……!」
堰を切ったように、言葉が溢れ出した。本邸では決して見せない、なりふり構わぬ情愛。
直哉はがむしゃらに、彼女の白い肌を、その柔らかな存在の全てを確かめるように抱き締めた。
彼女の着物が乱れ、露わになった項や肩に、直哉は何度も何度も、刻印を残すように唇を押し当てる。
「お前は俺のもんや。親父でも、他の男のもんでもない……俺だけのものや……!」
彼女は、その激しい執着を、まるですべてを飲み込む深い海のように受け止めていた。
直哉の背中に回された彼女の指先が、わずかに力を帯びる。
「…はい、直哉様…」
その慈愛に満ちた、けれどどこか寂しげな声が、直哉の狂おしいほどの愛をさらに煽っていく。
婚礼の夜、禅院家の嫡男は、その輝かしい将来の全てを投げ打つような熱量で、自分を飼い慣らした天女を、呪いのような愛で深く抱き潰していった。