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【呪術】短編集【禪院直哉】

第3章 【直哉×魔性女中】


あの日、堰を切ったように感情を溢れさせて以来、直哉の執着は形を変えた。

それは鋭利な刃物のような拒絶ではなく、喉を鳴らして擦り寄る獣の執着——かつての「坊ちゃん」そのものの姿だった。


「……終わったで。見てたか」

夕暮れの練武場。
凄まじい速度で木人を打ち据えていた直哉が、肩で息をしながら彼女の方を向く。

手入れの行き届いた金髪が汗で額に張り付き、その三白眼は獲物を追う鋭さを残しながらも、彼女を捉えた瞬間に熱を帯びた期待に染まった。

彼女はいつものように、微笑みを浮かべて佇んでいる。


「はい。今日も素晴らしい速さでございましたね、直哉様」

「当たり前や。誰やと思っとんねん……。ほら、こっち来い」


直哉は手招きし、彼女が歩み寄るのを待ちきれずにその手首を引いた。
いままでの刺々しい力ではない。

離したくないという、子供じみた強欲さだ。



「……もっと、ちゃんと褒めろや。言葉だけやなくて」


縁側に腰を下ろした直哉は、当然のように彼女の肩に頭を乗せた。

今の彼は、彼女よりもずっと背が高く、体つきも男らしく逞しい。それなのに、肩に乗せられたその重みは、彼女にとってはあの頃と変わらない愛おしい「子供」のままだった。


「はい、はい。本当にお偉いですよ。直哉様は、この家で誰よりも輝いていらっしゃいます」


白い指が、汗ばんだ直哉の髪を優しく梳く。その心地よさに、直哉は猫のように目を細めた。


「……親父よりもか」


ふと、直哉の口から漏れたのは、未だ消えない独占欲と嫉妬だ。直毘人の愛人という噂。
それが本当かどうかなんて、今の直哉にはどうでもよかった。

ただ、自分以外の男に、この穏やかな敬意が向けられることが許せないのだ。

「…当主様も直哉様のご成長をお喜びになってますよ」

「またお前は、のらりくらり」

直哉は不機嫌そうに顔を背け、彼女の帯を指先で弄んだ。

拗ねた子供のような仕草。

「そんなに拗ねないでくださいませ。
直哉様のお好きな甘味を用意しておりますから」


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