第2章 【直哉×甚爾元カノ】
窓の外で雀が鳴き始め、白んだ光が寝室の空気をごく自然に染めていく。
直哉の長い睫毛が微かに震え、ゆっくりと瞼が持ち上がった。
覚醒の瞬間、彼の瞳には昨夜の猛り狂ったような狂気はなく、どこか寝ぼけた、年相応の青年の色が混じっている。
「……ん、……」
掠れた声で名を呼び、直哉は腕の中にある柔らかな体温を確認するように、ぐいと力を込めてを抱き寄せた。
鼻先がの鎖骨に触れ、そこにある自分自身が刻んだ赤紫の痕を、確かめるように薄い唇でなぞる。
「……起きてたんか。自分、ほんまに……可愛げないわ。人の寝顔盗み見て、何考えとったん」
直哉はの胸元に顔を埋めたまま、籠もった声で文句を言う。
昨夜の暴力的な独占欲は、今は凪のような静かな所有欲に形を変えていた。彼の手は、の腰の曲線をなぞり、そこに留まる。
「何も。……直哉くんの寝顔、意外と幼いなあって思ってただけ」
が穏やかに笑いながら彼の金髪を梳くと、直哉は一瞬、身体を強張らせた。けれど、すぐに観念したように力を抜き、彼女の体温に身を委ねる。
「……幼いとか言うな。俺は、自分を泣かせた男やぞ。……あの、机の上にあったゴミみたいな写真……。もう、破り捨てたからな。二度とあんなもん、俺に見せんな」
「はいはい。勝手に見るからいけないのよ?」
「自分のもんは、全部俺のもんや。見るも触るも、俺の勝手やろ」
直哉は顔を上げ、をじっと見つめた。
その瞳には、甚爾を追いかけていた頃の焦燥ではなく、目の前の女を「どう自分の型に嵌めるか」という、静かで執拗な光が宿っている。