第1章 【直哉×働き者女中】
「情け……? あれが、情けなんですか!? 私は、私はただの女中です。働いて、誰かの役に立って、それでようやく生きてる心地がするんです!」
溜め込んでいた想いが、叫びとなって溢れ出した。
「直哉様にとって、私はただの飾りでしょう!? 苦しい時に側にいることさえ許されない、代わりのきく人形じゃないですか! 私じゃなくてもいいじゃないですか! 誰でもいいなら、あの子たちに……、他の女の人に、その愛情をあげればいいじゃないですか……っ!」
溢れ出した涙が止まらない。
直哉の顔が、驚愕に歪んだ。彼にとって、が自分に対して「代わりがきく」などという言葉を投げつけることは、想定外の侮辱であり、同時に致命的なすれ違いだった。
「……何、言うとんねん」
直哉の手が、震えるの頬に伸びる。
その指先は怒りで強張っていたが、触れる瞬間には、恐ろしいほどの脆さを孕んだ愛惜へと変わっていた。
「正気か…?自分」
直哉の声は、震えていた。
それは怒りというより、あまりに鋭利な刃で急所を突かれた人間が漏らす、呆然とした吐息だった。
「貴方のことは、知ってます。もう何年も、あの屋敷で働いてるんですから……!
いつもいろんな女を入れ替えて、大切にしてるフリして、少しでも間違えたらゴミクズみたいに捨てる。
私たち女中のことだって、人間やとも思ってないくせに」
の声が、狭いカフェの空気を切り裂く。