第1章 【直哉×働き者女中】
ある夜、直哉の膝に頭を預け、その白い指が髪を梳く心地よさに身を委ねながら、はふと自覚した。
空っぽだと思っていた自分の器が、直哉という男の執着で満たされていることに。
何もしていない。何も生み出していない。
けれど、この男が自分を「特別」だと呼び、慈しむ。
その事実が、かつての労働では得られなかった、甘美で残酷な充足感を彼女に与えていた。
「……直哉様」
は、自分を撫でる彼の手を、おずおずと握り返した。
直哉は一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐに満足げな笑みを浮かべ、彼女の額に口づけを落とした。
かつて糸切り鋏を握りしめていた拳は、今や力なく開かれ、ただ彼から与えられる幸せを零さないように掬い上げることしかできない。
それは、自らの意志を差し出す代わりに手に入れた、黄金色の終着駅だった。