【HUNTER × HUNTER】愛されすぎて困ってます
第2章 【1】ゾルディック家
色褪せることのない、恐怖。
「ご、ごめんなさい。 その、行ってもいいの……? しごと、……わたし、足手まとッ゛」
「オレが聞いてるのはそうじゃなくて、来るか来ないかなんだけど。 話聞いてた?」
俯いていた目がイルミの瞳を捉える。 それは自発的に上を向いたからではなく、彼の大きな手のひらがわたしの首を掴み上げたから。 それは本当に一瞬のことで、苦しいよりも先に困惑にも似た感情が「ぇ」と言う小さな一文字になって口から漏れた。
「ゥぎ、ュ……っ……」
次いで出たのは、潰れた気道から出た情けない呼吸音。 反射的に彼の手首を掴んでしまうも、それで離してくれる可能性は無に近いだろう。 かろうじて息を吐くことはできても、その分を補うことはできない。 まだ余裕がある内に、早く、早く早く早く、言わなければならない、言葉を、イルミに。
「ご、ごめ、ん……さ……ッぃ゛……」
「……。」
これじゃない。
弱まる気配がない絞圧に、足りない脳みそを必死に回転させる。 イルミはなにを望んでる? さっき彼が言っていたこと……そう、そうだ、求められているのは謝罪じゃなく、明確な“答え”。
「い゛ぎだ……い、しごど、……たい……っ」
肺に残っている空気を全て出す覚悟で、言葉を吐く。 だんだんと視界がぼやけ、彼の表情も見えなくなってきた。 ……あーあ、せめて、最後にイルミの顔が見える殺され方ならよかったのに。 そんなことを思いながら、わたしは掴んでいた彼の手首を離し、ゆっくりとまぶたを閉じた。
「ゲホっ……!! ォえ゛、はぁ、はぁ………」
パッ、と離れた手のひらに、不足していた酸素が喉を通り、全身に回る。 小さな嗚咽を繰り返すわたしのことを見下ろすイルミの顔が、クリアになった視界ではっきりと捉えた。