第26章 タイトル未定【予兆】
「七海さん! 姉さまは⁉︎」
忌庫から戻った伏黒は、詞織と共に星良の病室へと入った。
「先ほど目を覚ましました。伏黒君、詞織さん。あなたたちを呼んでいます」
静かに病室の扉を開くと、色白の顔を少し青くした星良が柔らかな笑みを浮かべて出迎えてくれる。
「おかえりなさい、二人とも。忌庫の鍵、渡しておいて正解だったわね」
星良の病院着の隙間からは包帯が覗いていた。
「星良さん、いったい何が……」
伏黒が尋ねると、星良は扉付近にいた七海へ視線を向ける。すると彼は一つ息を吐き、「何かあったら呼んでください」と小さく頭を下げて部屋を出ていった。
それを確認して、星良は居住まいを正す。
「まずは謝らせて。津美紀について黙ってたこと」
目立った動きがなかったことから、万は【死滅回游】に関して消極的だと二人は判断したらしい。だから、回游を抜けさせ、その後 受肉の件を処理する算段だったようだ。
けれど……万の方が一枚上手(うわて)だった。
「それでも、恵……一番の当事者であるあなたには、話しておかなきゃいけなかった。本当にごめんなさい」
頭を下げる星良に、伏黒は戸惑って つい詞織を見た。
詞織も少し困惑した様子で、夜色の瞳を揺らす。けれど、それも一瞬のことで、彼女は不意に目を伏せた。
伏黒も開いていた拳をギュッと握る。