第26章 タイトル未定【予兆】
暗い夜の道路の真ん中――一本の街灯だけが、男とその周辺を照らしていた。たくさんのコードに繋がれているのは、ブラウン管テレビ。さらに そこにレトロゲーム機まで繋いである。
砂嵐ばかりで何も映らないテレビの前で、羂索はソファに肘をついて座っていた。
「コガネ、あれから十九日経過した。【死滅回游】の泳者でありながら一度も結界に入場せず、術式を剥奪されて死んだ者は何人いる?」
『六十一名です。一覧に出しますか?』
コガネの提案に「いや、いい」と短く返し、深くため息を吐く。
「殺されることを恐れたのか、殺すことを恐れたのか……」
いや、違うな。
その六十一人にそんな直感的な感情はない。
日車 寛見が追加した総則があれば、どちらも回避できたのだから。
「この国の人間は、現実が不変恒常(ふへんこうじょう)なモノだと自ら暗示をかける。命も生活も、常に瀬戸際を流れているのに……」
誰だって命をかける勇気を持っているわけではない。だが、勝手に命をかけられてしまったら、行動するしかないではないか。
現実や未来に希望がなくても、死ぬことはいつだってできる。
まずは一歩 踏み出す。自分の理想に一歩 近づく。
その実感を知らないまま死んでいく人間には嫌悪しか感じられない。
「――貴様に言っているんだぞ、天元」
目を細め、羂索は砂嵐の立つテレビの画面を見つめる。
けれど、画面は揺れることなくただザー…という無機質な音を立てて沈黙していた。
* * *