第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
「だってさ、ヒーローを支えてくれる人たちがいるから僕たちは安心して活動ができるし、委ねることができる。でもそれって一人一人の努力や想いが繋いでくれてるんだよね。……そう思うと僕たちの方が恵まれてるって思うんだ。だから凪さんの個性って本当にすごいんだなって」
出久の浮ついた言葉も、教師になってからは多少は説得力がついた。向かいに座る轟は出久に合わせるように静かに〝そうだな…〟とだけ答える。
「そんなことないんだよ、全然…」
凪は一旦フォークを置いて、背筋を伸ばして出久と轟を見る。穏やかな眼差しで一言を噛み締めるように言う。
「でも、緑谷君って雄英の生徒が言ってた通りだね」
「え?何が?うちの生徒が何か言ってたの?」
「この前ね、うちの病院に雄英の生徒が入院してたときに言ってたの。緑谷先生ってどんな個性でも軽く扱ったりしない、どうやったら活かせるか、伸ばせるか、それをちゃんと考えてくれる先生だって」
「本当に?そんなこと言ってくれたの?」
「うん。その子はね、誰かと比較して落ち込むようなことがあっても、それを悲観することはないよって励ましてくれたのが嬉しかったって…。なんか私まで嬉しくなっちゃって…、だからいつか緑谷君に伝えたいなって思ってたの」
初めて凪と話した時、凪と出久が似てると思ったのは、馬鹿みたいに人を信用して包み込もうとするこの柔らかい空気だ。初めてなのに懐かしい、そう感じたあの時の感覚が重なる。
「よかったな、デクセンセー?」
「ちょ、やめてよかっちゃん」
「緑谷らしいエピソードだな」
「轟君まで…。でもそんな風に思ってくれてて嬉しいな。ちょっとだけ泣きそうだったし」
「ンだよ、酔ったんか?」
「言っとくけど、僕、オレンジジュースだからね?」
途中で抜けるはずだったのに、結局は会話が途切れないままラストオーダーを迎えた。それでも出久は相変わらず、個性の話題に食いついて熱心に質問してくるし、轟は無言で微笑みながら相槌を打っている。凪も初めて会ったとは思えないほど自然に馴染んでる。
こういうのも悪くない。凪の笑顔にそう思った。