第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
勝己がここまで言い切るのには、理由があるのだと思う。勝己の見ている方向に、勝己の描く場所に、きっと私はいないってことが苦しい。静かに心に蓋をするように小さく息を吸って〝うん〟と頷くのが精一杯だった。
「つーかもう仕事の話はいいだろ…」
「うん、そうだね。…紅茶、おかわり淹れようか?」
「いい」
そのまま視線だけが逸れずに私を捉える。まっすぐな迷いのない眼差し。
「なぁ…」
「ん…?」
「まともに帰ってくんのも久々なんだから…」
低く抑えた声でそう言ってから、勝己は一歩、距離を詰めた。
「俺の相手もしろ」
次の瞬間、腕を引かれて、そのまま抱き寄せられる。胸に顔が埋まって勝己の体温とかすかに残る雨の匂いが鼻先にふれた。体は軽々と抱き抱えられて寝室の方へと向かう。
「勝…」
「無理。待てねぇ」
ベッドに背中が触れる瞬間も回された腕は緩まない。逃がさない、そう言うように抱き寄せられて、二人分の重みにベッドが静かに軋んだ。
「相変わらず狭ぇベッドだな…」
「……勝己のベッドが広すぎるんだよ」
「けど俺はこっちのがいい」
「…え?」
「この無駄に柔らかすぎる布団も、凪の匂いのが残ってんのも、俺がずっと欲しかったモンだ…」
あの日みたいな雨音が二人の空間を包んで優しく切り離して、一ミリの隙も与えてくれないキスが雨音を遠ざける。残る意識は痛みと切なさを連れてきて甘い口付けすら苦しい。
どうして、こんなにも優しい言葉をくれるんだろう。これ以上、日常に勝己が色濃く残れば、いつか後悔するのは私なのに…。