第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
あれから数日が経った。もう六月だというのに、夜になると空気はまだどこか冷たかった。天気を告げるニュースではまだ梅雨入りの知らせは届いていない。それでも、日付が変わる少し前から窓の外で雨が降り始めていた。
カーテンを閉めて机に向かったまま、私は何をするでもなく時間を過ごしていた。お気に入りの紅茶は、気づけばすっかり冷えてしまっていて苦味だけが残る。強くなる雨音に何度目のため息をついただろうか。
今日、雄英のリカバリーガールを尋ねた。私の個性が不安定になっていることを相談したけど、結局は理由も原因も何も分からないままだった。個性が使えていた時のような温かさはもう感じなくて、ほんの少しの希望すら絶たれてしまったような逃げ場のない現実が残る。
「休職か、退職か…」
リカバリーガールからは精神的なことも関係しているかもしれないからとしばらく休むことも提案された。病棟での仕事は嫌いではないけれど、救命チームのことが忘れられない。
私の力が誰かのためになっていること。それが、私が私でいられる理由で、勝己と対等でいられる、たった一つの場所だった。それが私の全てだったのに、今更立ち止まれと言われても孤独も不安も消えてはくれない。
強くなる雨音の中、突然、インターフォンが鳴った。こんな時間に誰だろうと胸の奥がざわついたまま、モニターを覗いた。
「勝…」
映っていたのは見間違えるはずのない顔。ドアを開けると、そこにいたのはTシャツ姿の勝己で、髪は少し濡れていて、肩は雨の滴が残っている。
「……悪い、急に」
それだけ言って視線を外す。
「……どうしたの、今、地方じゃ」
震えそうになる声を必死で抑えながらそう聞くと、勝己は一瞬だけ黙って短く言った。
「半日だけ時間できたから、…会いにきた」
「……入って?雨で濡れちゃう」
「悪い…」
声を聞いた瞬間、胸の奥で張り詰めていたものがほどけた。熱い感情が込み上げてきて、涙が溢れそうだった。でも、泣いちゃダメ、そう自分に言い聞かせる。
「何か飲む?お腹減ってない?」
「あー、んじゃ凪と同じモンでいーわ。飯は食っとる」
「ん、分かった。紅茶淹れるね」