第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
「その辺、適当に座れ」
短くぶっきらぼうに言われ、どこに座ればいいのか一瞬迷ったけど、爆豪君の視線の先に恐る恐る腰を下ろした。背筋は伸び心臓が高鳴っているのも自分でもわかる。ちらっと周りと見渡してもただ圧倒されるだけでどうにも落ち着かない。爆豪君は何も言わずに私の隣に腰を下ろすと、距離がぐっと近くなり、思わず小さく息を呑んだ。
「緊張しすぎだろ」
「うん、だって全然落ち着かないんだもん」
「はっ、デクが初めて来た時も同じこと言っとったわ。お前ら思考が似てんな」
「うちなんて築25年のアパートの1DKだからね。このリビングより全然狭いよ」
「そりゃそうだろ。月いくらかかっとると思っとんだ」
「想像もつかないなぁ。一般人とプロヒーローだもん、……違いすぎるよ」
当たり前のことなのに自分の言葉に不安の色が滲む。車の中で好きだと言ってキスをくれたことは嬉しかった。でも生きてる世界がこうも違うと素直に受け取っていいのかさえ分からなくなる。
「なんも違わねぇ。ヒーローだろうがなんだろうが好きな女の前じゃ俺は俺だ」
「……え…」
「もし凪が今みてぇなくだらねぇこと考えてんなら、無駄だ。……世界が違うとか、釣り合わねぇとか、そういうの全部」
爆豪君の大きな手が頬に触れる。指先で優しく撫でながらゆっくりと視線を合わせる。
「俺が選んだ。それだけだ」
その言葉が一気に胸を熱くさせた。言葉を返す間もなく、唇がそっと重なる。さっきよりもずっと唇の感触がリアルで、角度を僅かにずらしても甘く馴染む。不安も迷いもキスだけで簡単に溶け落ちてただ甘い感情が優しく支配した。
「信じられねぇなら、凪が信じるっつーまで刻み込んでやろうか?」
心の奥に静かに解けない魔法がかけられた気がした。この瞬間から私の全ては勝己になった。